燕岳〜常念岳――1996.8.24-26(土日月)


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◆糸の会山行[16]
燕岳〜常念岳
計画
1996.8.23(金)〜8.26(月)実施


■K.西沢さん――1996.9.1
●燕岳〜常念岳登山の際は大変お世話になり、まことにありがとうございました。下山日の松本城から松本駅までの最後のラッシュは大変こたえました。今回は珍しくゆっくりできると喜んでおりましたのにやはり最後はあのような結果に終わりました。これも、糸の会の糸の会たる所以と列車の中で皆で笑ったところです。また、脚が痛くやっと歩いていたはずの自分が列車に遅れてはならじとよくもあの速度で歩けたと、今考えると不思議でなりません。火事場の何とか力というものだったのでしょう。その代わり、下山後の2日間は食欲も出ないほどの疲労感を覚え、何も出来ず、全くの死に体でした。
●私は、約2カ月ぐらい前より右足下腿部に痛みを覚え、冷えに対しかなり敏感になり、冷気、特に機械的な冷気に当たると非常な痛みを感じていました。しかし、当初はこの痛みも歩行中は血行が良くなるためか解消していましたが、日がたつにつれ、その痛みが残るようになっていましたので、今回の燕岳〜常念岳登山も、参加することに大変な不安を感じておりました。現に23日に穂高に入り、穂高神社、碌山美術館等を皆で歩いている時は体調を含め最悪となりました。が、同夜同行の皆様のお手当で元気を取り戻し、お陰様で素晴らしい感動の日本アルプス登山をどうにか最後まで体験することが出来ました。しかし、山小屋宿泊中、夜は脚の痛みから薬を取り出したり、脚をマッサージしたりで皆様の睡眠の邪魔をしてしまい大変なご迷惑をお掛けすることになりました。ここに深くお詫びいたします。
●行動中一番疲労を覚えつらかったのは、やはり2日目の燕岳から常念岳への長い行程でした。しかし、すべての行程を歩き終えることが出来たのは、やはり同行の皆様の暖かい励まし、恵まれたお天気、素晴らしいアルプスの山々でした。この感動は一生忘れることはないでしょう。
●そして、下山後、日常生活に支障を来たさないためにはどう歩いたらよいか、また持ち物をどうしたらよいか等々、いろいろ勉強させられた登山でもありました。何とか脚の回復に努め、今後も素晴らしい登山が続けられるよう願っています。


■K.磯部さん――1996.9
●早朝発の常念岳への行動では大変ご迷惑をおかけしてしまって申しわけありませんでした。大体夜歩行が下手なのでしょうか、よくわかりません。
●その時の現象を参考に申し述べておきます。後日ご教授いただけますならば幸いです。
●歩きはじめて早々から、すぐ後ろの女性の方が親切心からでしょうと思いますが、何となく私の足元近くに灯火先をあてて下さっていたのですが、私の脚の影で自分の足元が全く見えない有様でした。1.5m位前を歩く伊藤義子さんの足元の段は私にもよく見え、伊藤さんが実にゆったりと足を運んでおられました(伊藤さん自身は無灯火)。私がそこまで歩んで段を登ろうと思っても、適格な歩幅の判断のなさもあるのでしょうけれども、その位置に近づきはじめると前述の脚の影で全く不明となり、足で2、3度さぐっては岩石にのせたり、爪先だけが載ってしまったり、また、バランスも極めて不安定となり、一歩目は仮に載っても2歩目の予測がつかない始末で、急登あるいは長距離時の疲労とは全く異なるひどい疲労感におそわれ、このまま続行したら動けなくなると思って、「すみません、足のかげで見えないんです」といってしまいました。また具合が悪いことに(親切心からでしょうと思いますが)点け放しでしたので――全く時々、自分のライトを照らしはしましたが――、脈拍計を見てみればよかったと反省しています。
●私が言ったその返事として「すみません」と言われて、灯火先をご自身よりになおしていましたので、意識しておられたのかもしれません。
●ただでさえ、はじめの20分はしんどいのに、斯様な有様でしてすっかり参ってしまいました。3、4年前でしたか、長距離ナイトウォークに2度参加した折に体験しましたので、私はもし灯火するならば、全く自分の足元か、または少しうしろ側に照らすようにしていました。


◆テーマ
●北アルプスの「表銀座」コースの前半部。小屋泊り縦走の基本的な体験です。
●北アルプスの名門山小屋燕山荘は当初帝国ホテルの資本が入ったところ。フムフムと思わせる風格があります。それに対して常念小屋はフツーの山小屋。
●山小屋泊まりの価値は、日没と日の出のドラマを特等席で見られること。天気が悪くなければ外に出てみることです。

◆集合
8.24(土)0900=JR大糸線穂高駅改札口

●往路案内=A(8.24=土)
0817=松本駅始発(普通穂高行き)
0843=穂高
●往路案内=B(8.23=金、松本泊まり)
1830新宿→2125松本=あずさ67号
1900新宿→2136松本=スーパーあずさ13号
2000新宿→2239松本=スーパーあずさ15号
2100新宿→2355松本=あずさ69号
*電話予約コード
あずさ67号……34167
スーパーあずさ13号……65713
スーパーあずさ15号……65715
あずさ69号……34169
●往路案内=C(8.23=金、夜行利用)
2350=新宿始発(急行アルプス信濃大町行き)
0432=松本
0449=穂高
●往路案内=D(8.23=金、夜行利用)
2354=新宿始発(急行アルプス85号信濃森上行き)
0443=松本
0501=穂高
●往路案内=E(高速バス)
1840新宿高速BT→2150松本BT
1930新宿高速BT→2240松本BT
*全席予約=京王帝都電鉄03-5376-2222

◆登山
●8.24=土
0900ごろ=穂高駅からタクシー分乗で中房温泉へ
1000ごろ=中房温泉から登山開始
1500ごろ=燕山荘
*休憩または燕岳往復
*燕岳泊まり
●8.25=日
0430ごろ=希望者は燕岳往復
0800ごろ=燕山荘出発
*ただし下山希望者はここで解散
1200ごろ=大天井岳(昼食)
1500ごろ=常念小屋
*休憩または常念岳往復
●8.26=月
0430ごろ=希望者は常念岳往復
0800ごろ=常念小屋出発
1300ごろ=三股に下山タクシーで豊科駅へ
*ただし十分な予備時間をとっておきたいため、帰路の電車・バスはできるだけ最終便近辺を押さえておいてください。
*山小屋は団体として予約します。食事などがいっしょになります。

◆電話番号
●燕山荘=現地0263-28-2020
●常念小屋=現地0263-35-9706
●南安タクシー=0263-82-2181
●安曇観光タクシー=0263-82-3113

◆費用の目安
●新宿→穂高=運賃4,220円
●豊科→新宿=運賃3,810円
●新宿〜松本=特急指定席券2,970円
●高速バス=新宿〜松本=3,400円
●タクシー=穂高→中房温泉=1台7,000円前後
●タクシー=三股→豊科=1台5,000円前後
●燕山荘1泊2食+弁当=9,500円
●常念小屋1泊2食+弁当=9,300円
●松本周辺での宿泊が必要です。(夜行はできるだけ避けてください)

◆帰路参考
●帰路案内=A
1716松本→2006新宿→2051千葉=あずさ68号
1831松本→2106新宿=スーパーあずさ14号
1849松本→2136新宿=あずさ70号
2000松本→2236新宿=スーパーあずさ16号
*電話予約コード
あずさ68号……34068
スーパーあずさ14号……65614
あずさ70号……34070
スーパーあずさ16号……65616
●帰路案内=B(高速バス)
1710松本BT→2020新宿高速BT
1810松本BT→2120新宿高速BT
1910松本BT→2220新宿高速BT
*全席予約=松本電鉄0263-35-7400、京王帝都電鉄03-5376-2222

◆特急指定席の電話予約(省略)

◆松本駅前のビジネスホテル(シングル)
★スピカイン(歩1分、6,ooo円)0263-32-6000 ★ホテル新升(歩5分、6,000〜)0263-34-5000 ★松本ツーリスト(歩5分、4,900円)0263-33-9000 ★ホテルニューステーション(歩1分、6,300円〜)0263-35-3850 ★松本タウンホテル(歩3分、6,000円〜)0263-32-3339 ★ホテルサンルート松本(歩7分、5,500円)0263-33-3131 ★松本東急イン(歩3分、9,000円)0263-36-0109 ★ハミルトンイン松本(歩10分、7,000円)0263-32-2888 ★ホテルブエナビスタ(歩7分、8,800円)0263-37-0111 ★松本ウェルトンホテル(歩5分、8,700円)0263-27-3000 ★信州ホテルアルピナ(歩10分、6,500円)0263-32-1100 ★ホテル飯田屋(歩1分、6,500円)0263-32-0027 ★ホテルおたりや(歩5分、6,000円)0263-32-1430 ★ホテルニューステーション(歩1分、6,700円)0263-35-3850 ★ホテルしろきや(歩3分、6,500円)0263-33-1311 ★松本グリーンホテル(歩5分、6,700円)0263-35-1277 ★松本タウンホテル(歩3分、6,200円)0263-32-3339

◆持ち物
●「1時間モデル」でいえば燕岳への登りが4つ分、常念岳からの下りが5つ分、そのあいだが稜線のアップダウンです。稜線上で万が一風雨、雷に遭遇したときの防風・防雨、防寒さえしっかりしていれば、軽量化が最善の準備です。
★足ごしらえ――運動靴+ソックス
★行動着――ドライタイプの登山用Tシャツ+長ズボン+長袖シャツ
★防雨――折りたたみかさ+ポリ袋(数枚)+ゴアテックススーツ
★防寒――ウインドブレーカー(ゴアテックススーツで兼用可)+セーター(フリース)
*ゴアテックススーツのないかたは非常用に、ビニールの上下型使い捨て雨具をお持ちください。
★食べ物・飲み物――水筒+昼食(1日目)+予備食(行動食兼非常食兼おやつ)2食分
★小物――地図(送付されたオリエンテーションレターなど)+時計+(カメラ)+(双眼鏡)+ポケットライト
★ザック――何でも可
*運動靴はスノトレがベターですが、普通の運動靴でも大丈夫ですご心配なく。
*2日目、3日目の昼食は小屋お弁当を作ってもらいます。
*小屋での着替えはできないと考えておいて下さい。着替えを持つ必要はありませんが、運動靴の人は小屋ではく予備のソックスはあったほうがいいでしょう。
*ゴアテックスのシュラフカバーをお持ちの方は、持つ余裕があれば活用して下さい。

◆燕岳→常念岳=ルートチェック=1
*引用地図は国土地理院発行1:25,000地形図で「高山2号-4」→「高山6号-2」→「高山7号-1」→「高山3号-3」とたどります。これは参加者のみなさんのシミュレーション用資料です。
 第1日目は中房温泉から燕山荘まで、距離で約4km、標高差は1,450m(中房温泉)から2,700m(燕山荘)の1,250mあります。したがって糸の会でいう「1時間モデル」4個分の登りということになります。
 ここに示したのは燕山荘に所属する荷揚げ小屋・合戦小屋(売店有り、宿泊可)までで、このルートの森林帯の部分ですから天候にほとんど左右されず、日帰りの低山歩きとほとんど同じ感覚で登れる部分です。合戦小屋までは約2.5km、標高差約1,000mですから平均すると1kmあたり約400mという登りが続くということになります。「北アルプスの三大急登」と燕山荘では自慢していますが、私はこの道のさりげない手入れこそ燕山荘がもっと自慢していいところだと思っています。日本エアシステムの機内誌に書いた登山虎の巻(すでにお読みいただいた方がほとんどでしょうが)を付録としてつけます。数字がところどころ合致しないかもしれませんが、読んでおいて下さい。
 合戦小屋までは距離1km=15分、高度100m=15分で概算すると正味3時間。食事時間を含めて休みをたっぷり取りましょう。

◆燕岳→常念岳=ルートチェック=2
 合戦小屋の上に2,489mのピークがありますが、その周辺にハイマツの記号が出てきます。日本アルプスでは標高2,500mあたりが森林限界となるという標準的なカタチです。ハイマツ帯からその上部が高山植物のお花畑になるわけです。視界が広がって、北アルプスの稜線を見ながらの登り。よほどバテた人でなければ、幸せな「もうひと登り」。この区間は距離1.4kmで標高差300mですから「1時間モデル」よりゆるやかな登りだということがわかります。
 しかし同時に、森林限界を超えると、樹林によるバリアもなくなるということ。風と雨が、ときに激しく襲ってきます。また夏には午後になると雷に襲われる危険が大きくなります。身を隠す場所がないからです。
 したがってこの道では合戦小屋が大きな安全弁になっていて、万一先に進めないときには、ここに泊まるという選択もあるのです。
 燕山荘に着けば第1日目の行動はOKですが、元気のある人は(時間があれば)荷物を置いて、燕岳まで足を伸ばしてみましょう。

◆燕岳→常念岳=ルートチェック=3
 北アルプスの主脈縦走路として燕岳→大天井岳(だいてんじょうだけ)→常念岳を取り出してみました。このページの図は起点とした燕岳から燕山荘までの北端部。
 稜線の両側に引いた太線は2,650m等高線を鉛筆でなぞったもの。2,650m等高線を基準にすると、この縦走路のアップダウンが把握しやすくなります。
 といってもここはまだ燕山荘の奥庭みたいな部分。標高2,700mの燕山荘から2,762.9mの燕岳まで小さなアップダウンがあるだけです。

◆燕岳→常念岳=ルートチェック=4

 燕山荘から大天井岳までの稜線約4kmの部分です。
 標高2,650mの等高線をなぞった太線を見ると、狭い稜線であることがよくわかります。ここではよく見えないかもしれませんが、稜線上のところどころに丸っこい岩の記号がありますから、吹きさらしの場所であることが想像できます。もう少しよく見ると、稜線一帯はハイマツ帯、急斜面を下ると森林帯になっています。足下の緑を見ながら、ハイマツや、か弱い風情の高山植物や、露岩の道を歩きます。
 ガイドブックによるとこうなります。2km地点の蛙岩は巨岩が道をふさぐようにしていて、狭い割れ目を通るところ。大下りという小鞍部を通過すると為右衛門吊岩。これはたぶん見過ごしてしまうとか。そして大天井岳の直下に至って4.8km地点あたりにあるのが切通岩。難易度の低い鎖場となっている。この鎖場を下ったところにあるのが小林喜作のレリーフ。中房温泉から槍ヶ岳への喜作新道(すなわち表銀座コース)を開いた北アルプス開山期の名ガイドです。
 ここまで時速2kmで歩ければ2時間の行程です。ここで喜作新道と別れて、大天井岳の東側をトラバースして南側に、町営大天荘でひと休み。元気な人は大天井岳に空身で登る予定です。
◆燕岳→常念岳=ルートチェック=5
 町営大天荘から常念小屋までの約5kmが2日目の後半部分です。標高2,922mの大天井岳を最高峰とする常念山脈の稜線です。東天井岳(2,814m)、横通岳(2,767m)と大方下り基調の道をたどって標高2,450mの常念小屋まで。ここも時速2kmで歩ければ約2時間という距離。
 ガリガリの登頂主義ではありませんが、頂上に登れるチャンスがあったらできるだけ逃さないようにするのがいいと思います。そういう気持ちがあるうちは元気だということでもあります。それに目の前の山が明日も登れるとは限りません。
 しかしもっと重要なのは、わざわざやってきて目の前にある極上の展望台から、何がどのように見えるかは、登ってみないと分からないということです。晴れているかどうかなどとは関係なく、すばらしい眺めが広がることがあるのです。それも刻一刻と変化しながら。
 ですから今回の山旅では、日没と日の出に大いなる期待をしたいと思うのです。
◆燕岳→常念岳=ルートチェック=6
 この地図は燕岳から南下してきた縦走路を常念岳、前常念岳まで伸ばしたものと、常念小屋を起点とする三股への下山路とが重なっています。
 標高2,450mの常念小屋から標高2,857mの常念岳への登りは約1時間。空身で往復すると1時間半+山頂滞在時間ということになります。
 下山路は、常念岳へは登らずに、トラバースして前常念岳に出る道を選びます。なにしろすごい急斜面の下りです。しかも小屋から電話してタクシーを三股へ呼んでおきます。時間には余裕を持たせて三股でタクシーを待つぐらいにはするつもりですが、3日目ですから調子の悪い人がいないとも限りません。ともかく安全に下るということを第一義に考えます。
 前常念岳の避難小屋のところから急な下りになります。最初は露岩地帯ですが、標高2,350mあたりで森林帯に入るようです。

◆燕岳→常念岳=ルートチェック=7
 下山路全体では距離要素が5.5km、高度要素が登り250m+下り1,350m合わせて1,600mとなります。距離1kmあたり15分、高度差を登り下りなしに100mあたり15分としてエネルギー量を時間で計ることの合理性をあらためて感じる、ものすごく「足ごたえ」のある下りです。計算どおり5時間半をとっておきます。(ガイドブックでは3時間半程度のようですが)
 このコースにはすごい下りがあるのです。標高2,150mから1,550mまでの600mのところを道がジグザグに描かれています。もちろんこのジグザグは表現に過ぎません。道を描く線の太さの中に収まってしまうようなジグザグをかなり拡大して描いているわけです。この部分を登りと同じ2時間とっておくわけですが、7割で歩けるか、6割で歩けるか、早い人は早いのです。でもゆっくりと安全に下りたいと思います。
 当然、下りの終盤で、速い人と遅い人を分けると思いますから、三股に早く着いた人にはお茶でも入れてのんびりしていてもらいましょう。


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